2015年01月24日

法務省で法整備支援連絡会に出席しました。

2015年(平成27年)1月23日、法務省法務総合研究所国際協力部で行われた法整備支援連絡会に出席しました。


第16回法整備支援連絡会(法務省と国際協力機構JICA共催)

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法務省:第16回法整備支援連絡会プログラム



わたくしは、上記プログラムの内、第二部から参加させていただきました。


従来本法整備支援連絡会に参加する際は、法学徒として発表を聞いてきましたが、昨今選挙で立候補していることもあり、このたびの発表は政治家としても聞きました。


つまり、これまでは、法学徒として、法学部で勉強した知識を法律専門家の基礎知識として捉え、議論に参加してきましたが、政治家としてここで行われている議論を聞くと、「ちょっと待てよ」と思うこともあることに気づきました。


一例を挙げると、欧州委員会(EC) 開発・協力総局ガバナンス民主主義ジェンダー人権課長 ジャン・ルイ・レネ・ヴィル氏による発表について、「ちょっと待てよ」と思いました。以下、まず一部を引用します。


(引用始まり)

Jean-Louis VILLE.(2015). EU support to Justice, including Legal and Judicial Assistance in the post-2015 era. The 16th Annual Conference on Technical Assistance in the Legal Field 2015. Legal technical assistance in the post-2015 era. ICD. Osaka.

ジャン=ルイ・ビル(2015)「ポスト2015時代におけるEUの法整備支援」『第16回法整備支援連絡会(2015年) ポスト2015時代の法整備支援』法務省法務総合研究所国際協力部 大阪


原文

The reality at country level also shows that informal justice systems in legal pluralistic societies are often preferred by vulnerable people in their attempt of seeking justice, especially for people living in smaller communities, or those sharing common customs, languages, and beliefs. (Jean.(2015).p.7.).


Nevertheless, informal justice mechanisms can also act as a barrier to meaningful justice, particularly for the poorest and most disadvantaged community members, often reinforcing existing power structures and promoting elite domination and influence. (Jean.(2015).p.7.).


Rarely do informal mechanisms take into account the legal right of the individuals involved or consider international human right standards. (Jean.(2015).p.7.).


In recent years, based on several evaluations and studies on EU support to justice sector, and given the policy advancement regarding the primary importance of human rights in EU external action, we are shifting from a human rights mainstreaming towards embracing a human rights based approach in development cooperation. (Jean.(2015).p.8.).


This means that the individual is the subject of rights and has claims on the state and its institutions, which have duties and obligations. (Jean.(2015).p.8.).


訳文(法務省が用意した訳文)

また国レベルの実情をみますと、脆弱な人々が司法を求める場合は、法多元主義社会の中でインフォーマルな司法システムをより好むことが多く、比較的小さな地域社会に住んでいる人々や、共通の慣習、言語及び信条を共有している人々の場合は特にそのような傾向があります。(ジャン(2015)7頁)。


それにもかかわらず、インフォーマルな司法制度は、とりわけ最も貧困で恵まれない地域社会の住民にとって、有意義な司法に対する障害となる可能性があり、しばしば既存の権力構造を強化し、エリート層の優位性と影響力を強めることになる可能性もあります。(ジャン(2015)7頁)。


インフォーマルな司法制度では、個人の法的権利や国際的な人権基準が考慮されることはあまりありません。(ジャン(2015)7頁)。


近年、司法部門へのEUの支援に関するいくつかの評価や調査に基づき、またEUの対外的行動における人権の第一義的重要性に関する政策の進展を考慮して、私たちは開発協力において、人権の主流化という手法から、人権に基づくアプローチを採用する方向への移行しつつあります。(ジャン(2015)8頁)。


このことは、各個人は権利の対象であり、義務と責任を追う国家及びその機関に正当な要求を行う権利を有するということを意味します。(ジャン(2015)8頁)。

(引用終わり)


と、引用部分だけ読むとニュアンスが伝わり難いかもしれませんが、わたくしは「ちょっと待てよ」と思いました。


まず、「また国レベルの実情をみますと、脆弱な人々が司法を求める場合は、法多元主義社会の中でインフォーマルな司法システムをより好むことが多く、比較的小さな地域社会に住んでいる人々や、共通の慣習、言語及び信条を共有している人々の場合は特にそのような傾向があります。」という部分は、わたくし自身の調査研究結果からも事実であるということができます。


しかしその後の議論の持って行き方が、「ちょっと待てよ」なわけです。


わたくしによる調査研究結果は、日本や国際社会による法整備支援も、被支援国のインフォーマル司法システムを尊重し、取り込んでいくべきだという結論を示しています。言い換えると、日本や国際社会の法的価値を押し付けるのではなく、被支援国の法的価値と整合かつこれを活用した支援を行うべきだという結論です。


ところが、ジャン(2015)は、「インフォーマルな司法制度では、個人の法的権利や国際的な人権基準が考慮されることはあまりありません。」として、以後、要するに、国際社会の法的価値を押し付ける計画であることを宣言しています。


わたくしたち日本人も基本的人権の重要性は理解しています。


ですが、わたくしたち日本人は、これまで基本的人権、とりわけ個人主義、個人の尊重を強調しすぎて、地域共同体が崩壊し、人と人とのつながりが切断され、個人が孤立化していないでしょうか。


わたくしたち日本人は、個人の孤立化という帰結は望んでいませんし、個人の孤立化に幸福感はありません。


このことは、わたくしは、インドネシアに7年間以上滞在して、インドネシアの人とも共有している感覚だと知っています。


つまりインドネシアの人は、個人の孤立化という帰結は望んでいないし、個人の孤立化に幸福感を感じる人々ではありません。


わたくし自身はこの感覚はアジア全体に広げて良いと見ています。


そうすると、EUの政策はアジア地域に対しては、有効な政策ではないと思われ、「ちょっと待てよ」との意見を抱かせるに至ったわけです。


収集資料

アレハンドロ・アルバレス(2015)「法の支配と人権分野におけるUNDPの支援活動及びポスト2015年開発アジェンダ」『第16回法整備支援連絡会(2015年) ポスト2015時代の法整備支援』法務省法務総合研究所国際協力部 大阪

Alejandro Alvarez.(2015). UNDP Support to Rule of Law, Human Rights and the Post-2015 Agenda. The 16th Annual Conference on Technical Assistance in the Legal Field 2015. Legal technical assistance in the post-2015 era. ICD. Osaka.

ハイケ・グラムコウ(2015)「ポスト2015年の持続可能な開発目標(SDG)環境における司法改革支援の準備」『第16回法整備支援連絡会(2015年) ポスト2015時代の法整備支援』法務省法務総合研究所国際協力部 大阪

Heike Gramkow.(2015). Preparing for Justice Reform Assistance in the post-2015 Sustainable Development Goals (SDG) environment. The 16th Annual Conference on Technical Assistance in the Legal Field 2015. Legal technical assistance in the post-2015 era. ICD. Osaka.

ジャン=ルイ・ビル(2015)「ポスト2015時代におけるEUの法整備支援」『第16回法整備支援連絡会(2015年) ポスト2015時代の法整備支援』法務省法務総合研究所国際協力部 大阪

Jean-Louis VILLE.(2015). EU support to Justice, including Legal and Judicial Assistance in the post-2015 era. The 16th Annual Conference on Technical Assistance in the Legal Field 2015. Legal technical assistance in the post-2015 era. ICD. Osaka.

濱田摩耶・外務省国際協力局(平成27)「第16回法整備支援連絡会 政府開発援助(ODA)大綱の見直し ODA大綱から開発協力大綱へ」『第16回法整備支援連絡会(2015年) ポスト2015時代の法整備支援』法務省法務総合研究所国際協力部 大阪

HAMADA Maya・International Cooperation Bureau, Ministry of Foreign Affairs. (2015). The 16th Annual Conference on Technical Assistance in the Legal Field 2015. Review of Official Development Assistance (ODA) Charter. From ODA Charter to Development Cooperation Charter. The 16th Annual Conference on Technical Assistance in the Legal Field 2015. Legal technical assistance in the post-2015 era. ICD. Osaka.

法務省法務総合研究所国際協力部(2015)『第16回法整備支援連絡会(2015年) ポスト2015時代の法整備支援』法務省法務総合研究所国際協力部 大阪

International Cooperation Department, Research and Training Institute, Ministry of Justice, Japan.(2015). The 16th Annual Conference on Technical Assistance in the Legal Field 2015. Legal technical assistance in the post-2015 era. ICD. Osaka.

法務省法務総合研究所国際協力部(2014)『法整備支援活動年表(法務総合研究所が把握しているものを中心に)』法務省法務総合研究所国際協力部 大阪

法務省法務総合研究所国際協力部(2014)『法制度整備支援 顔の見える国際協力』法務省法務総合研究所国際協力部 大阪

国際民商事法センター(平成26)『ICCLC 公益財団法人 国際民商事法センター』国際民商事法センター 東京

国際協力機構(2015)『JICAの法整備支援事業』国際協力機構 東京

日本貿易振興機構(2015)『アジア経済研究所のご案内』日本貿易振興機構 千葉

国連アジア極東犯罪防止研修所(平成26)『UNAFEI 国連アジア極東犯罪防止研修所 United Natoins Asia and Far East Institute for the Prevention of Crime and the Treatment of Offenders』国連アジア極東犯罪防止研修所 東京

名古屋大学法政国際教育協力研究センター(2015)『Nagoya University CALE Center for Asian Legal Exchange』名古屋大学法政国際教育協力研究センター 名古屋

Ministry of Justice.(2014).Ministry of Justice. Ministry of Justice. Tokyo.

Nagoya University.(2013). Perspective for Nagoya University's Action Asia Approach. Nagoya University. Nagoya.

International Cooperation Department, Research and Training Institute, Ministry of Justice, Japan.(2014). ICD News. ICD. Osaka.

国際協力機構(2014)『JICA Profile』国際協力機構 東京

名古屋大学大学院法学研究科(2015)『博士課程教育リーディング大学院 法制度設計・国際的制度移植の専門家養成プログラム』名古屋大学大学院法学研究科 名古屋

名古屋大学(2013)『名古屋大学が取り組む 「アジア力」の未来構想』名古屋大学PhD登竜門推進室 名古屋


参考文献

法務省法務総合研究所国際協力部(2015)『第16回法整備支援連絡会(2015年) ポスト2015時代の法整備支援』法務省法務総合研究所国際協力部 大阪

International Cooperation Department, Research and Training Institute, Ministry of Justice, Japan.(2015). The 16th Annual Conference on Technical Assistance in the Legal Field 2015. Legal technical assistance in the post-2015 era. ICD. Osaka.

アレハンドロ・アルバレス(2015)「法の支配と人権分野におけるUNDPの支援活動及びポスト2015年開発アジェンダ」『第16回法整備支援連絡会(2015年) ポスト2015時代の法整備支援』法務省法務総合研究所国際協力部 大阪

Alejandro Alvarez.(2015). UNDP Support to Rule of Law, Human Rights and the Post-2015 Agenda. The 16th Annual Conference on Technical Assistance in the Legal Field 2015. Legal technical assistance in the post-2015 era. ICD. Osaka.

ハイケ・グラムコウ(2015)「ポスト2015年の持続可能な開発目標(SDG)環境における司法改革支援の準備」『第16回法整備支援連絡会(2015年) ポスト2015時代の法整備支援』法務省法務総合研究所国際協力部 大阪

Heike Gramkow.(2015). Preparing for Justice Reform Assistance in the post-2015 Sustainable Development Goals (SDG) environment. The 16th Annual Conference on Technical Assistance in the Legal Field 2015. Legal technical assistance in the post-2015 era. ICD. Osaka.

ジャン=ルイ・ビル(2015)「ポスト2015時代におけるEUの法整備支援」『第16回法整備支援連絡会(2015年) ポスト2015時代の法整備支援』法務省法務総合研究所国際協力部 大阪

Jean-Louis VILLE.(2015). EU support to Justice, including Legal and Judicial Assistance in the post-2015 era. The 16th Annual Conference on Technical Assistance in the Legal Field 2015. Legal technical assistance in the post-2015 era. ICD. Osaka.

濱田摩耶・外務省国際協力局(平成27)「第16回法整備支援連絡会 政府開発援助(ODA)大綱の見直し ODA大綱から開発協力大綱へ」『第16回法整備支援連絡会(2015年) ポスト2015時代の法整備支援』法務省法務総合研究所国際協力部 大阪

HAMADA Maya・International Cooperation Bureau, Ministry of Foreign Affairs. (2015). The 16th Annual Conference on Technical Assistance in the Legal Field 2015. Review of Official Development Assistance (ODA) Charter. From ODA Charter to Development Cooperation Charter. The 16th Annual Conference on Technical Assistance in the Legal Field 2015. Legal technical assistance in the post-2015 era. ICD. Osaka.
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